札幌冬季オリパラ招致反対運動の記録

私たちは NPO 法人さっぽろ自由学校「遊」の会員が中心となり、2023年6月に設立した市⺠グループ です。

オリンピック・パラリンピックの招致に前のめりな札幌市の姿勢を見て、
「今の時代、札幌になぜオリパラが必要なの?」
「オリパラに頼らないと街づくりはできないの?」
「除雪やインフラ整備など、もっと他にやることがあるのでは?」
「東京2020の負の遺産の酷さを目の当たりにし、総括もないまま札幌招致はあり得ないのでは?」
などといった疑問を感じた人は多いのではないでしょうか。

そして、北海道内外・国内外の専門家・活動家 とつながりを持ち、集会・勉強会を重ねるうちに、私たちはオリパラが持つ根源的な問題点を認識し、共有するに至りました。

活動の甲斐あって、札幌は2030 年・2034年の冬季オリパラ開催国の選考から漏れましたが、この間の私たちの活動内容を文字や画像の形で記録しておくことで、将来的に役立つことがあるかも知れないと考え、このサイトを制作しました。多くの人に参考資料として活用されることで、オリパラによる不幸が札幌だけでなく世界のどこにもないような未来のための一助となれば幸いです。

2024年6月 さっぽろオリパラを考える市⺠の会

オリパラ招致反対活動年表

2014年-2021年 招致表明から東京2020大会

年月日IOC・JOC・札幌市の動きオリパラ招致反対運動・市⺠の動き
2014年
11月
上⽥市⻑(当時)が2026年冬季オリパラ招致を表明
「ゆうひろば」のインタビュー記事を読む
2018年
9月
胆振東部地震を受けて冬季オリパラ招致のターゲットを2030年に変更
2019年
12月
東京2020⼤会のマラソン・競歩を札幌で⾏うことを決定
2020年
3月
コロナ禍のため、東京2020⼤会の1年延期を決定
2021年
7月
東京2020⼤会開催
7/17「オリンピック中止を求める誰でもサイレントウォーク」実施
8月東京2020⼤会のマラソン・競歩が札幌で⾏われる街頭・マラソン競技コース沿いにプラカード等を掲げた反対運動実施

2022年 市議会で五輪招致推進決議

年月日IOC・JOC・札幌市の動きオリパラ招致反対運動・市⺠の動き
2022年
3月
五輪招致に関する意向調査実施(賛成に誘導する恣意的な内容・賛成は52%)
市議会で五輪招致推進決議
6月
第1回不招致デモ実施(札幌五輪対策室主催)
住⺠投票条例議員提案を否決
7月オリンピックを止めよう︕4都市会議(札幌五輪対策室・反五輪の会共催)
8月東京五輪での汚職事件(スポンサー選定を巡る贈収賄)が発覚
第2回不招致デモ実施(札幌五輪対策室主催)
9月第3回不招致デモ実施(札幌五輪対策室主催)
10月第4回不招致デモ実施(札幌五輪対策室主催)

「五輪狂奏曲〜東京で起きたこと・札幌で起こること」講演会開催【講師】本間龍⽒ (札幌五輪対策室主催)
11月東京五輪での談合事件(広告代理店による⼤会運営受注を巡る談合)が発覚さっぽろ自由学校・遊・講座、北海道の問題から地球と共生の未来を考えるpart2「札幌オリンピックを止めよう!オリンピックは世界のどこにもいらない」【講師】江沢正雄
第5回不招致デモ実施(札幌五輪対策室主催)
12月市⺠グループからの住⺠投票実施の請願を不採択

2023年 札幌招致断念へ

年月日IOC・JOC・札幌市の動きオリパラ招致反対運動・市⺠の動き
2023年
1/20
さっぽろ⾃由学校「遊」連続講座︓第5回「市⺠の目から考える札幌オリンピック」(⾼野馨⽒・⾼橋⼤輔⽒)
講座資料を見る
1月第6回不招致デモ実施(札幌五輪対策室主催)
3月市⺠グループからの住⺠投票実施の陳情を継続審議⇒審議未了・廃案
3/21
「オリパラを考えよう集会」開催【講師】佐々木夏子⽒/井谷聡子⽒(さっぽろオリパラ を考える実⾏委員会主催)
4/9市⻑選挙で現職の秋元⽒が3選するも得票率を⼤幅に落とす
市長選・秋元陣営の街宣
5/7
第7回不招致デモ実施(札幌五輪対策室主催)
5/8IOCバッハ会⻑宛意⾒書提出・記者会⾒開催(さっぽろオリパラを考える実⾏委員会)
IOCへの手紙を読む
掲載記事を読む(朝日新聞 2023年5月9日)
5/9さっぽろ⾃由学校「遊」連続講座:第1回「札幌市の招致活動と私たちの ” 不招致 ” 活動」(札幌五輪対策室)
5/22冬季競技⼤会に向けた⼤会運営⾒直し案に関する検討委員会(第1回)開催
6/1さっぽろオリパラを考える市⺠の会」発⾜・第1回会議・毎⽇新聞取材
6/6さっぽろ⾃由学校「遊」連続講座:第2回「『犠牲の祭典』としてのオリンピック」(鵜飼 哲氏)
講座資料を見る
6/15スウェーデンのオリンピック委員会が2030年⼤会の招致を表明
6/25 PARCO前でスタンディング
6/28冬季競技⼤会に向けた⼤会運営⾒直し案に関する検討委員会(第2回)開催
6/29札幌冬季五輪出前講座開催(市⺠⾃治を創る会主催)
7/4さっぽろ⾃由学校「遊」連続講座:第3回「クーベルタンの『夢と悪夢』から考えるオリンピックの未来―札幌をどうするか」(上村英明氏)
7/7市議会オリパラ調査特別委員会で東京五輪の汚職・談合事件を受けた独⾃の再発防止 策を中間報告
7/18フランスのオリンピック委員会が2030年⼤会の招致を目指すと発表
7/26市⺠からの住⺠投票実施の陳情2件(6/6付託)を継続審議
7/29
市⺠説明(オープンハウス・説明会)開始
8/1さっぽろ⾃由学校「遊」連続講座:第4回「地域からオリンピックをどう見るか」(奥田 仁氏)
8/3道新フォーラム「札幌五輪招致の現在地」(道新主催) 
道新フォーラム会場前にて
8/21北海道・札幌2030冬季オリンピック・パラリンピック 公開討論会(JC主催)
8/30第1回オンラインティーチイン「過去の成功例に学ぶオリンピックのやめさせ⽅」開催【講師】佐々木夏子⽒(さっぽろオリパラを考える市⺠の会主催)
9/2
(札幌市主催のオープンハウスに参加した平尾剛氏)

「オリンピックからスポーツと社会を考えるー札幌五輪開催に反対する意義-」講演会開催【講師】平尾剛⽒(さっぽろオリパラを考える市⺠の会主催)→ちらしを見る
9/5さっぽろ⾃由学校「遊」講座「札幌オリパラを考えよう」第5回「話し合い オリパラよりも安心な暮らしを!」(若月美緒子氏・雨宮恭子氏・田村リエ子氏、他)
9/20第2回オンラインティーチイン「IOCとは、どのような団体か?」開催【講師】佐々木夏子⽒(さっぽろオリパラを考える市⺠の会主催)
9/29第3回オンラインティーチイン開催【講師】井谷聡子⽒(さっぽろオリパラを考える市⺠の会主催)
10/3冬季競技⼤会に向けた⼤会運営⾒直し案に関する検討委員会(第3回)開催 汚職・談合の再発防止策原案を提示
10/3さっぽろ⾃由学校「遊」講座「札幌オリパラを考えよう part2」第1回「オリパラ決定に 我々の声を」(さっぽろオリパラを考える市⺠の会)
10/52030年招致断念報道流れる
秋元市⻑、2034年以降の招致を目指すと発⾔
10/15ムンバイでのIOC総会で2030年・2034年開催地同時内定することを決定 2034年はソルトレークシティが有⼒視されており、札幌は絶望的と報じられる
10/18市議会決算特別委員会
秋元市⻑、2034年以降の招致を目指す⽅針維持
10/26秋元市⻑、記者会⾒で2038年招致に⾔及する
11/7さっぽろ⾃由学校「遊」講座 「札幌オリパラを考えよう part2」第2回「オリパラ招致開催は札幌市⺠の総意で決める―市⻑や議員に『当選すればこっちのもの』にさせてはならぬー」開催(森啓⽒)
11/29IOC理事会で2030年はフランス、2034年はソルトレークシティに内定 2038年はスイスと優先的に交渉することになり、札幌招致は絶望となる
12/5さっぽろ⾃由学校「遊」講座「札幌オリパラを考えよう part2」第3回「市⺠⾃治と住⺠投票」開催(高橋大輔氏)
2024年
2/10
市議会与党会派(自民・公明・民主)宛に質問状を送付…いずれの会派も回答なし
2/13市長宛に要望書を提出
2/29市議会のオリパラ調査特別委員会が開催される。市側と議会各会派がそれぞれ総括を述べ、この日をもって委員会は解散となった。
3/1北海道新聞で「札幌市長・JOCの責任触れず 五輪招致検証 活動9年27億円 わずか7ページ」と報じられる。

札幌五輪対策室の活動(X)

資料集

ちらし

もっと知ろう!ちらし(PDF)
講演会ちらし(PDF)

IOCへの手紙(英仏日)

IOCへの手紙(英仏日)

上田文雄さん(元札幌市長)インタビュー記事

「ゆうひろば」第182号(2022年4月)
上田文雄さん(元札幌市長)に聞く(PDF)

公開質問状・要望書

講座資料(スライド・レジュメ)

掲載許可のとれたものを公開しています。

さっぽろ⾃由学校「遊」2023年後期講座・第5回「市⺠の目から考える札幌オリンピック」高橋大輔氏資料(PDF)
さっぽろ⾃由学校「遊」2023年後期講座・第5回「市⺠の目から考える札幌オリンピック」⾼野馨⽒資料(PDF)
※神奈川県総務局財政部財政課作成の資料を引用・加工
さっぽろ⾃由学校「遊」2023年前期講座「札幌オリパラを考えよう」第2回「『犠牲の祭典』としてのオリンピック」資料(PDF)

さっぽろオリパラを考える市民の会・活動の総括

別表に記載の通り、札幌冬季オリパラ反対運動は2021年の東京大会のころから始まっていましたが、当会の活動は、2023年3月21日の「オリパラを考えよう集会」が事実上のキックオフでした(会の正式な設立は2023年6月1日)。そして、札幌市の開催国候補落選(2023年12月)を経て2024年2月末に最後の市議会オリパラ調査特別委員会を傍聴するまでの約11ヶ月が当会の札幌オリパラ反対の活動期間といえます。ここで活動を一区切りし、この間に得られた成果及び課題についてまとめておきたいと思います。

主な活動

  1. 講演会の主催(3/21、9/2)
  2. さっぽろ自由学校「遊」の連続講座開催
  3. IOCバッハ会長宛意見書提出・記者会見開催
  4. ティーチイン(オンライン自主勉強会)の開催
  5. 不招致デモ(さっぽろ五輪対策室主催)への参加
  6. 街頭スタンディングの実施
  7. 市議会議員各会派との意見交換
  8. 市議会(オリパラ調特委等)の傍聴
  9. 札幌冬季五輪出前講座(職員による説明会)への参加
  10. 公開討論会への参加(道新・JC)
  11. 市民説明会(オープンハウス・説明会)への参加
  12. 招致活動停止が決まった後、市長宛に意見書を、市議会与党各派宛に質問状を提出

得られた成果

1.最も大きな成果はオリパラの問題点への理解が深まり、今後も活動を続ける上での確信・モチベーションを得ることができたことです。自由学校「遊」の連続講座や佐々木夏子氏・井谷聡子氏によるティーチイン、及び各種「反五輪」関連書籍・論考に触れるに従い、オリパラそのものが持つ根源的な問題点(差別・環境破壊・行き過ぎた商業主義・利権による不正の発生・ジェントリフィケーション・IOCと開催国との不平等な力関係・過剰な警備・社会的弱者へのしわ寄せ、等)を認識・共有することができました。

2.次にあげられるのは、集会の企画・デモ・説明会への参加などの活動を通じて、社会に対して直接意見を訴えることを体験できたことです。特に「オリパラ招致」というテーマは身近でかつ市民の生活・将来のまちづくりに大きな影響を与えるものであり、「憲法」や「原発」のような重たい問題と異なり、比較的気軽に周囲の人に持ちかけやすいテーマでした。

3.そして、もう一つは、市議会の傍聴や市民説明会などへの参加を通じ、市長と市議会与党がいかに市民の側を向いていないか、「市民自治」が形骸化されたものであるか、そして「誰も責任を取らない」体質であるかを知ったことです。このことはオリパラに留まることではなく、今後、私たちは市政をいっそう厳しい目で監視する必要があるとの思いを新たにしました。

残された課題

  1. 自由学校「遊」の連続講座やティーチインにより、当会メンバーのオリパラに関する知識・問題意識は向上しましたが、一方で他の市民団体や一般市民との連携・情報共有が弱かった感があります。MLのメンバーも開設当初の18名からほとんど増えないなど、活動の広がりが限定的でした。
  2. 上記と関連しますが、SNSでの発信・情報拡散も弱く、X(旧Twitter)のフォロワーは171人に留まりました。
  3. オリパラ開催そのものに根源的な問題があること、「世界のどこにもオリパラはいらない」というメッセージを多くの人に伝えきれませんでした。
  4. 市民の声をろくに聞かないまま招致活動に邁進し、27億円もの市税を無駄に浪費し、結果として招致に失敗した札幌市と市議会与党の責任を追及しきれませんでした。

まとめ

「札幌の落選」というIOCの判断の大きな理由の一つは「地元の支持率が上がらなかったこと」と思われます。この結果に対し、私たちの活動が与えた影響は微々たるものだったかも知れませんが、オリパラの歴史や現在進行中の問題点をきちんと勉強した上で草の根運動を行ったことそれ自体に大きな意義を感じます。

今後、当会は解散せず、フランス在住の佐々木夏子さんら道外・国外のアクティビストと連携し、引き続き「世界のどこにもオリパラはいらない」という価値観の共有・浸透に努めてまいります。

一方、足元の札幌からオリパラが当面遠ざかったからといって喜んではいられません。2月末に市は9年間にわたる招致活動の総括を公表しましたが、その内容たるや僅か7ページのチープなもので、市民の声を聞くことなくひたすら招致に邁進したあげく、27億円もの市税を無駄に浪費したことの責任には一切触れていません。このような市民不在の政治が続くうちに、2038年以降のオリパラ招致の動きが再燃しないとも限りませんし、IR誘致や万博といったハコモノ・イベントの計画が持ち上がる可能性もあります。私たちは機会をとらえて今後も与野党の市議会議員などと対話を重ねることで市政をウォッチし続けるとともに、市民自治を絵に描いた餅でなく実質的なものにするための不断の努力をすることが必要です。

オリパラや万博などの計画が次に持ち上がる頃には当会員の多くはかなりくたびれているかも知れません。だからこそ今回の活動で得た経験・知見を次の世代にしっかりと引き継いでいかなければならないのです。この活動記録がその時に役立つことを願ってやみません。

最後に、今回の活動にかかわったすべての方、特に連続講座や講演会で講師を務めてくださった方々に心よりお礼申し上げます。

以上